女性。推定年齢十九歳。
小柄で華奢、さらさらの黒髪と透き通るような白い肌、
人形然とした容姿の可憐な少女である。
外見からはまったく想像できないが、
かの「七幹部」に名を連ねる事実からも明らかなように
TUパイロットとして十分以上の資質を備えており、
扱いの難しいカットナッターを用いた近接戦闘を得意とする。
乗機はアーニラ(同機の前パイロットがマンジーラに移乗したことに伴う)。
なお、彼女がパイロットとなって以降のアーニラは、
それ以前と比して明らかに機体各部の反応速度が向上している。
これは、ワンオフ機体であるアーニラに組み込まれている
特殊なシステム――パイロットの脳波波形を読むことで
最適動作を判断する――との相性が良好なためと思われる。
写真で身につけているヘッドドレスやチョーカーの内側には
脳や脊髄に接続する電極が取り付けられており、
ベール状の装飾の端にあるプラグをコクピットシート脇のコンセントに挿入することで
上記システムとのリンクが行われる。
数年前、月面ワームホール近傍の非武装中立地帯で保護される以前の記憶を
名前を除きすべて失ってしまっているため、その経歴の一切が不明である。
ところでトモエが全裸で保護された当時はいわゆる閉鎖期であったにもかかわらず、
ワームホールの重力波が僅かに安定を失っていた。
ゆえに現場の者たちは「彼女は“向こう側”の人間ではないか?」と考え、
彼女が半ば自失状態であったにも関わらず、強引な尋問を行おうとしている。
これに俄然憤ったのが、本星から査察に訪れていた
「鉄壁将軍」ムッグ・アークである。
彼は無言の威圧と詭弁と超法規的措置とを鮮やかに駆使して、
その場から見事にトモエを救い出したのだ。
それからの二人の経緯を詳細に語るは無粋というものであろうが、
ともあれ、戸籍の登録にあたって彼女はアーク姓を選択したのであった。
余談だが、彼女の黒い衣服は非常に高価で高機能な素材でできており、
この素材はライアン財団関係者の着用品にも用いられていると言われる。