暗黒時代以前から存在する超高層都市。
現在では上層部が廃墟となっており、
人が住んでいるのは中層以下(といっても数百メートルの高さ)
の階層に限られている。
これはかつてニューヨークの住民が全滅し、
百年単位の空白ののち、再度、
人が暮らしはじめたという経緯に起因する。
壊滅の原因は樹木の異常成長であったと見られる。
樹木の侵食による都市構造の破壊と、
生態系の変化、疫病の蔓延によって、
ニューヨークはゴーストタウンと化したのである。
ときおり発生するこのような樹木の異常成長には、
地球府が迅速に対応して成長抑制を行うため、
ニューヨークのような悲劇が起こることは稀である。
しかし、当時ニューヨークやその周辺地帯で
繁栄を謳歌していた国家は、
地球府の各種の規定を破ることが常態化しており、
この地球府の保護を得られなかったものと思われる。
しばしば誤解されているが、地球府の存在目的は、
地球を再び人類に適した環境に戻すことである。
そして、現在地球に存在するあらゆる国家は、
再生中の地球に長期滞在許可を得て住まわせてもらっているに過ぎない。
ワームホールの彼方に新天地を得た者たちの末裔に、
地球の居住権はないのである。
地球府の任務は未だ地球の環境改変段階にあり、
現時点では「地球における人類の生存」を保証していない。
むしろ、同じ人類であろうと目的の障害となるならば
意図的に排除することもある。
このことをニューヨークの故事は雄弁に語っている。
なお、ケダブール条約機構が軍を動かして
ニューヨークを統一国家連合から奪ったのは、
この地を研究することで、
彼らを悩ませていた森林の異常拡大への
有効な対策を見出すことが目的であった。
(参考:「ニューヨークの戦い」)