当初、ただ「第三勢力」と呼ばれていた未知の存在。
プレオスレジスタンスの蜂起の裏で糸を引いていたという
恐るべき真実が明らかになった後も、
彼らの文化についてはその多くが謎のままであった。

やがて他の陣営との交渉が行われる段階に戦局が移行した折、
ようやく明らかになった彼らの実態は、きわめて独特なものだった。

神聖にして真に静かなる存在――<真静>と便宜的に自らを称する彼らは、
最高意思決定機関<御柱>への信託のもと、
原始宗教にも似た強固な精神的結束で繋がった、
軍民一体の組織である。

特筆すべきは彼らの意思疎通方法であろう。
彼らは「言葉」ではなく、抽象的な「図形」を共通言語にしたコミュニケーションを行うのだ。

発声器官が退化しているわけではないため、
その気になれば喋ることも歌うことも可能であるが、
彼らにとって声帯を使うのは低俗で下劣な行動に他ならない。
上流階級の一部の者に至っては、
遺伝子操作によって先天的に声帯が削除されているという。

「視覚至上主義」とでも言うべき社会に彼らは生きているのである。
TUはじめとする機動兵器群に特異な色彩や形状が多く見られるのも、
彼らのこうした文化ゆえであった。

かような社会に生きる人々にとって、
視覚を失うこと――失明は、死にも等しい恐怖の対象である。

発達したバイオテクノロジーをもつ彼らは
先天的・後天的問わず盲目をいとも簡単に治療できるが、
唯一、その恩恵を被ることを許されない者たちがいる。

罪人である。
殺人などの重罪を犯した者には、刑罰として視覚の剥奪が行われるのだ。
これを<視刑>という。

視刑>に処された罪人らはその後
懲役として実戦部隊への参加を強制されるが、
彼らのほとんどは喜んでこれを受け入れる。
なぜならば、彼らはTUと繋がった時のみ、
TUのセンサを目として視覚を取り戻すことができるからだ。

マノ・リレッケムは、
こうして編成された<真静>の咎人部隊に所属するTUパイロットの一人である。
元々無実の罪で<視刑>となった人物であり、
自らを陥れ、のちに<御柱>の一柱となった元親友への復讐を生きる動機とする。

ステガギガス攻略戦ではボイキド・シャッハを駆り
終始最前線で敵を撹乱する奮闘を見せたものの、
敵の「鉄壁将軍ムッグ・アークの策にはまり、作戦は失敗。
自機も中破し、マノは命からがらに撤退した。

なおこのとき彼は、捕虜としてトーマス・クリステンセン伍長を連れ帰っている。
前線に現れた時代遅れの旧式に視覚的な驚きを覚えていた<真静>は、
トーマスを捕虜離れした厚遇でもてなしたという。


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