PNG製試作TU。型式番号PNG-U1-D。
不採用に終わった偵察用TU、PNG-U1-Cの改良型。
愛称は地球府警邏職の号「サルサ」に由来する。
PNGは先のC型での失敗を教訓とし、帰還暦521年、
当時TU開発を進めていたヴィンデと提携。
A.G.インダストリー系とは別の
新規格を立ち上げる意気込みだったが、
翌年、虎の子のプロト・ベーチュオンの
情報流出を嫌ったヴィンデが提携を破棄。
これによりPNGは規格共通化を諦め、
特徴的なTUを提供することで活路を見出そうとした。
そこでD型「サルサス」では機体軽量化と燃費の向上、
ツィーダ偵察型にはない静謐性の確保、などが求められた。
これらの要求仕様に対し、
PNGのTU開発陣は同社の伝統技術である
軟質装甲と多孔質緩衝材をC型以上に多用。
難題をクリアし、また高い運動性も獲得した。
ただし、カムラ・ブレードの斬撃に
対する防御は完全に無視しており、
対TU戦においては先手を取って急所に一撃を加え、
その後すみやかに離脱する、
あるいは最初から運動性を頼りに逃げる、
というスタイルが想定されている。
偵察用装備もすべて一新された。
探査プローブは滞空性能を改善し、
専用の発射筒を用意。
ブーメランナイフは隠し武器としての用途を諦め、
撹乱・工作用としてオプション化。
火砲の携帯は世情を見て取りやめ、
作動音のないミナト工業製カットナッター
を携行武装として選択している。
PNGとしてはサルサスを確実に売り込む予定であったが、
折悪く第三期トライアルでプロト・ベーチュオンと
ツィーデフという「主力上位機種」候補が披露され、
技術革新を感じ取った議会軍は
従来と同水準のTUは新規採用しないと発表。
結果、装甲を変えただけの旧世代機種と見做された
サルサスは不採用となってしまう。
二度連続の売り込み失敗となったPNGだったが、
他分野での行き詰まりが懸念されていたため
この新分野を簡単に諦めるわけにはいかず、
サルサスをテスト機として研究を続行。
オグ・アム・イットウをテストパイロットに登用し、
多用な環境下での多彩な動作パターンを試行し、
その際の機体各所の負荷と軟質装甲の疲労度を調査。
このデータは後発機にじゅうぶんに活かされ、
名練習機、PNG-U1-Fアスガルが生まれることになる。
なお、オグ・アム・イットウの使用した機体は
彼の門弟(亡き先代社長の孫娘との噂あり)が乗り継いでおり、
帰還暦528年においても健在な姿が目撃されている。